議案審査等

予算決算

6月補正予算を修正可決。議会の権能を発揮! 附帯意見も

S__6053918.jpg6月定例会では、本市の名誉市民である故野村克也氏の功績や考え・言葉(こころ)を後世に引き継いでいくため 、官民で組織する実行委員会を設立し、同氏の名を冠する顕彰制度を創設する事業をはじめ、物価高騰に対する事業者への消費喚起と生活支援を図るため、京丹後デジタルポイントシステムを活用し、全市民を対象に買物支援ポイントを発行する事業など、総額5億6295万円を増額する補正予算に対して、議会は500万円を減額する修正案を可決した。

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(仮)野村克也賞2023.07.05 本日6月定例会が終わった。

補正予算の審査は予想外の展開となった。
9日の予算委員会で審査を終える予定が、審査は終わらず、23日午後、28日午後の3日間にわたる異例の審査となった。
争点とったのは、地域消費喚起事業の内の消費喚起ポイント事業補助金と野村克也メモリアルプロジェクト推進事業の内の野村克也賞実行委員会(仮称)補助金500万円だ。
特に野村克也メモリアルプロジェクト委員会(以降、PT委員会)から提言があったとされる「野村克也賞」の創設に関して多くの疑義が出された。

予算決算常任委員会(以降、予算委員会)では、

  • なぜ、今年度中に創設しなければならないのか。
  • 賞の目的は何か。
  • プロ野球選手等著名人を対象とする意義は何か。
  • 市民福祉の向上にどうつながるのか。
  • 100万円の賞賜費の算定根拠は何か。
  • 450万円の費用を使ってどれだけの費用対効果があるのか。
  • 1年目と2年目で選考基準が違うのか
  • 恒久的な事業なのか。財源はどうするのか。

などの質疑に対して、十分な答弁が得られなかった。
PT委員会の議事録においては、事業について十分な検討がなされたとはいえず、「具体性が無い。議会で予算が通るとは思えない」「事務局に任せるという話にはならない」の意見もあった。今回、執行部の提案では、そうした意見が無視され「PT委員会では全会一致」かのような答弁がなされた。さらに「PT委員会で十分に検討され・・・」「PT委員会では、年内の受賞を・・・」「PT委員会は・・・」とことある毎に、PT委員会を盾にする答弁を繰り返したことは、甚だ遺憾でならない。
PT委員会は、どのよう提言を出そうとも、市長の諮問機関である。提言を受けた執行機関が、住民福祉に資する事業として精査し、市長の責任において提案されるべきものである。責任を市民に転嫁するようなことは、あってはならない。

議会は、執行機関の提案に対して、「住民福祉の向上に資するかどうか」「行政がすべき事業か」「費用対効果はどうか」など、多様な立場の議員が総合的に判断して、合議によって結論を出す場である。
今回の審査においては、

  • 名誉市民の名を冠するからこそ、その名にふさわしい賞かどうか。
  • 住民福祉の向上に資することのない事業は認めない。
  • 「否決されたら次は出さない」程度の政策なら認めない。
  • 議員個々の責任において、賛否を決める。
  • 説明責任を果たせない政策は賛成しかねる。

といった視座が働いたと感じる。

また、京丹後市議会は、より多様な意見を聞くため、こうした議論の過程を「市民に見える化」する等の議会改革に取り組んでいる。にも拘わらず、予算委員会の休会中に、執行機関により議員への個別相談が行われ、「名誉市民の賞をなぜ議会が反対するのか」「議会で否決されたら関係者から議員がどう思われるか」「否決されたら次は出さない」など、裏で賛成に誘導するような事実があったことは、残念で仕方がない。

今回改めて、議員各位並びに市長及び執行機関には、議会の独立性、透明性、公平性の観点から、議長として以下の見解を申し述べることになった。
その上で、予算委員会において、補正予算の修正に加え、委員会への意見を附すこととなり、結果として議会の権能を果たすことができたと思う。

 

審査中の議案に対する執行機関の関与について

審議中の案件について、本会議とは別に、執行部が議員に対して個別の説明や説得に回ることが、以前より見受けられます。
しかしながら、議会基本条例の第7条では「議会審議において、議員と市長等執行機関の長は、緊張感の保持に努めなければならない」と規定し、第8条2項において「立案及び執行における論点及び争点を明らかにし 、政策評価に資する審議に努める」と規定しています。また、第10条において、「議会と市長等執行機関が共に市民に対する責任を担いながら、計画的かつ市民の視点に立った透明性の高い市政の運営に資する」としています。
議会の独立性、透明性、公平性を守るためには、議会活動はすべて公開され、すべての議員が平等に議案の審議に参加できる環境を整えることが重要であり、その影響を以下に指摘します。

【議会の独立性】
議会は、行政から独立して、住民の代表として議論し、決定を下す機関です。従って、執行部からの独立を保つことが重要です。
しかし、執行部が個々の議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員が執行部の意向に影響を受ける可能性があります。これは、議会が執行部にコントロールされることにつながり、議会の独立性を損なうことになります。

【議会の透明性】
議会は、住民に対して開かれた議会である必要があります。従って、その活動を市民に公開し、透明性を確保することが重要です。
しかし、執行部が個々の議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員間の議論が市民に公開されず、透明性が低下する可能性があります。これは、議会の活動が透明性を欠くものとなり、市民の信頼を失うことになります。

【議会の公平性】
議会は、住民に対して公平な議会である必要があります。従って、公平に議事を行うことが重要です。
しかし、執行部が議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員が特定の利益団体の利益に偏った議論や執行部の意向に偏って議事を行う可能性が高まります。
また、特定の議員が他の議員よりも有利な立場になる可能性もあり、議案が不公平に審議されたりする可能性があります。

【結論】
以上のから、審議中の案件について、本会議等とは別に、執行部が議員に対して個別の説明や説得を行うことは、議会の独立性、透明性、公平性を損なう可能性があり、議会として認めるべきではないと考えます。

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2023/07/05 審査の着眼点   谷津 伸幸
タグ:予算決算

令和4年度当初予算を修正、附帯決議は全会一致で可決!!

令和4年度当初予算を含む54議案の審査を終え、3月定例会が閉会した。katari.png
コロナ対策関連予算(令和3年度補正)を含む13ヵ月で編成された令和4年度当初予算の総額は357億9915万円となった。
しかし、当初予算については、十分な検討や内部調整がなされていない事業も多く、最終的に議会として5つの事業(計12,697千円)を予備費に充当する修正予算を提案し賛成多数で可決。2つの事業についての附帯決議を全会一致で可決する異例の幕引きとなった。
市の都市機能構想を今後50年以上に渡り固定する可能性を含む庁舎建設については、予め令和4年度当初予算から切り分け補正第一号とすることで4月に継続審査することとなった。
今回の予算においては、「SDGs」や「若者」といったキーワードが掲げられ免罪符のように感じた。市民の「あったら良い」という声を全て叶えることは、必ずしも適切とは言えない。全ての事業において「公共性は高いか」「公益性はあるか」「緊急性はどうか」「持続可能性はどうか」などの視点で検証し、他の政策と照らし合わせ、市長の責任において「最善の策」として議会へ提案しなければならない。当然、事業の目的・趣旨が明確で、費用対効果が考慮されなければ、議会として予算を認めることはできない。
流行りの言葉に踊らされることなく、持続可能な地域社会とするために、何が必要なのか。行政として何をしなければならないのか。議会としても、今一度、考えなければならない。

 

修正事業の概要と議会の意見

○副業型ふるさと創生職員採用 5,793千円

【事業概要】

U・Iターンの受け皿として創設したふるさと創生職員に、都市部の企業等に籍を置いたまま京丹後市の仕事を副業で行う「副業型」を新設するもの。

【議会の意見】

副業型は本市への移住が期待できない。そもそもの目的である定住ができないのであれば、採用の条件を満たさないにも拘らず、採用条件を緩和するというのは本末転倒である。また、具体的な業務の想定がなされていない。
リモートで、どれだけの効果がえられるのか費用対効果に疑問を感じる。職員採用委託料の200万円は高額すぎて理解できない。

 

○SDGsポイント発行経費 1,500千円

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京丹後デジタルポイントの導入により、SDGs活動を行った市民等に対して登録店舗等での買い物に使用できる自治体ポイントを発行する。

【議会の意見】

SDGsには極めて多種多様な活動があり、ポイント評価するに足る客観的基準がない。かえってSDGs活動に対する市民の間での、不公平感を大きくする恐れが多分にある。
ボランティアやSDGsなどの自発的な行動に対して、ポイント付与することは、逆のインセンティブに働くのではないかと危惧をする。

 

○長寿食サミットフォーラム(仮称)準備経費 2,344千円

【事業概要】長寿食サミットフォーラム(仮称)開催準備事業.jpg

令和5年度に長寿食サミットフォーラム(仮称)を開催して、長寿食をアピールする。令和4年度は専門家の意見交換や先進イベントの視察などの準備経費。
サミットフォーラムを観光の出口として、令和5年度以降に商工観光部で進める。

【議会の意見】

令和4年度は、健康推進課で準備を進めるとしているが、開催の目的や具体的な内容、スケジュールも未定で、予算根拠として不透明な部分が多い。
更に、令和5年度のサミットフォーラム開催する商工観光部は、食やヘルスツーリズムの関係であるものの、長寿PRにはなるが観光の分野とは考えていない。
また、フォーラムに来丹される方の経済効果との見方であり、連携がとれているとは見えない。
この事業が、市民にとってのメリットを感じない。
議会として、こういった事業提案は決して認められない。

 

○京丹後産コシヒカリによるSDGs貢献事業 2,460千円

【事業概要】京丹後産コシヒカリによるSDGs貢献事業.jpg

SNSを活用した食料支援として、SDGs大賞をとったプラットフォーム「おにぎりアクション」を活用し、京丹後産コシヒカリをPRする。

【議会の意見】

「おにぎりアクション」は協賛企業が多く、自治体としても3番目。メディア露出によるPR効果も薄い。
「おにぎりアクション」への投稿で 100万円の PR効果があるとの説明についての根拠が乏しい。
また、公金出資によるPRが目的となっており、食料支援を行う「おにぎりアクション」の目的からして主客転倒している。

 

○水洗化推進支援事業補助金のリースバック活用分 600千円

【事業概要】

地域経済の活性化と既存住宅の水洗化を図ることを目的に、下水道等の供用開始から3年内に水洗化する費用の一部を補助するもの。
リースバック制度は、令和3年度に新設。

【議会の意見】

リースバック制度は、宅地価格が極端に低く不動産事業者も否定的であり相談もない。
予算執行の見込みがない予算を計上することは、地方財政法の観点からも適当でない。

 

 

修正事業の概要と議会の意見

京丹後デジタルポイント導入事業

【事業説明】京丹後デジタルポイント導入事業.jpg

スマホのアプリのみの対応で、必須の条件となる。
当面、自治体ポイントやSDGsポイントなどで、ポイント付与を進めていく。ポイント運営協議会の事務局は、商工会を中心に調整し、2人程度の人件費を見込んでいる。
導入に当たり各商店街と意見調整した。発行ポイントは事業者負担とし、会費はスタート時から徴収する。
登録店舗は、初年度は300店舗を目標としている。最終的に500店舗に増えると、月々2,000円の会費で、人件費も含めて運営でき、市の支援は必要なくなる。
将来的にデジタル地域通貨の導入の可能性について検討する。

【議会の意見】

消費喚起ポイントの発行については、スマホで電子決済する人に限られる。
市外の方にも最大2000ポイント(2万円の買い物で2000円)が付与される。
積算根拠を25,000世帯としているが、市民の電子決済の実態は分かっていない。
世代間で電子決済の普及状況の違いが予測され、制度的な問題がある。

 

丹後王国タワー等跡地整備事業

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オートキャンプ場をメインに検討していたが、オリンピックでスケートボードに注目が集まり、与謝野町の方を中心多くの署名を頂いた。
2月の連絡調整会議にスケートボートパークを提案したところ、RVパークやグランピングができたらありがたいという話があった。
府の担当課長に「スケートボードパークがしたい」と説明した。丹後王国ブルワリーには口頭で伝え、財団には連絡会議で伝えた。
異議があれば連絡がある。

【議会の意見】

平成27年のリニューアルでは、市長は積極的に取り組んでこなかったが、観光の中核施設として、どうあるべきか議論して頂きたい。
王国タワー撤去と跡地活用と合わせて、昆虫館やトイレの検討も不可欠だが全く協議・検討されていない。運営会社・管理会社との協議も十分とはいえない。改めてゼロベースで検討する必要性がある。
「修正すると、王国タワーの撤去や再活用を否決したこととなり、府の合併特例債の許可や協議が不調に終わる」との説明だが、それは議会としても望む結果ではない。有利な財源を活用するため附帯決議とすべき。

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2022/03/30 審査の着眼点   谷津 伸幸

新春のご挨拶と議会報告

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謹んで、
新春のお慶びを申し上げます

 昨年は、コロナ対応に振り回され、様々な活動が制限された一年でした。感染症の急速な拡大は、ワクチン接種等により、一旦は沈静化しましたが、新たに感染力の強いオミクロン株の出現で予断を許しません。しかしながら、マスク・手指消毒をはじめ感染予防に取り組み経済活動を再開することも望まれています。また、一年を超えて続いた緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が地域経済に与えた影響は大きく、コロナの影響で傷ついた地域経済の立て直しは、喫緊の課題であり最優先事項でです。さらに、中長期的には、魅力にあふれる京丹後、働きがいのある京丹後市を目指すことで、誰もが京丹後に帰ってきたい、住み続けたいと思えるまちにしていくことが大切です。
 本年、壬寅(みずのえとら)は、厳しい冬を越えて芽吹き始め、新しい成長の礎となる年といわれています。春からは折り返して後期となり、議会構成も一新されます。「誰もが、安心して健やかに、笑顔で暮らし続けられる京丹後」となるよう邁進して参ります。

 皆様にとって、新たな日常が芽吹く年になることをご祈念申し上げ、引き続き、ご支援を賜ります様、宜しくお願い申し上げます。

 さて、近況を以下の通りご報告します。

 

まちづくりの拠点整備の検討が始まった

都市機能構想
コンパクト&ネットワーク

 合併協議では「新庁舎の位置に関しては合併後に検討する」として、現在の峰山庁舎が暫定的な本庁舎として合意されました。以来16年間、本庁舎の位置はおろか、新市建設計画に明記された都市拠点や地域拠点の整備について何ら提起されることなく時が過ぎ、有利な財源である合併特例債の期限が迫る中、当初の庁舎増築棟計画では、「将来的な本庁舎」として位置づけ提案されました。
 何の議論もないまま安易に庁舎を固定化するだけでなく、唯一残された新しいまちづくりの機会を市民から奪うことになります。3月定例会では、都市拠点と地域拠点について議論しないのであれば、増築棟建設は容認できない旨を主張した結果、増築棟建設に関する予算が一旦取下げられ、6月定例会で改めて、都市拠点と地域拠点について議論と合わせて検討されることになりました。

 私は、幾度となくこの問題を取り上げてきましたが、市民の視点で考えるのであれば、今いる場所で誰もが安心して住み続けるために、日々の生活に必要なことが概ね賄えるよう市民局等に整備する。地域拠点から遠い集落においては、自治会などの協力を得て小さな拠点を整備し、コミュニティバス等で地域拠点と繋ぐことができれば、さらに安心です。先ずは生活に身近な地域拠点を整備し、そこへまでの公共交通を確保することが重要です。その上で、都市拠点には、行政の中央的な機能や文化施設を整備することで、商業施設等が集積される。同時に都市拠点は、地域拠点や医療機関と公共交通等で結び、全ての公共交通の結節点として機能させることが重要です。

 市ではこれまで、行財政改革の名の下に、経費を削減し、効率化と集約を繰り返してきました。その結果、顔の見えない市役所となり、市民から遠い存在となっているのではないでしょうか。近年多発する豪雨災害等への対応、少子化・過疎化による地域力の低下などを考えると、このまま全ての行政機能を集中することが、最善とは考えていません。

 これまでは、職員を集約することが当たり前で、市役所が遠くなった分をICTで市民と対面する方法を模索してきました。しかし、コロナ禍でICTの活用が進む中、働き方改革とも相まって、どこでも仕事が出来る環境が整い分散勤務を可能にしました。ただ、短期的には情報弱者への配慮も必要です。また、緊急時には目の前に職員がいるだけで市民は安心を感じるものです。総合的に考えれば、地域拠点に行政職員を分散配置することで拠点施設が維持できるだけでなく、周辺の雇用を生み、地域の賑わいに繋がります。逆転の発想で、市民と職員をICTで繋ぐのではなく、職員同士が繋がり、職員が市民に寄り添う組織風土をつくるべきではないでしょうか。

 

 

丹後地域における民間の大型風力発電事業について

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京丹後市内に予定されている民間の大型風力発電所の建設事業について、9月定例会、12月定例会と2回の請願が提出されました。この件は、SNS等では、ネガティブな情報も多く、市民の皆さんから不安や懸念の声も頂いています。
 一方、風力発電事業は、基本的に国が進める再生可能エネルギーの一つであり、多くの法令の制約をクリアして初めて着手されます。また、整備の過程や整備後の管理においても法令の制約を受けることになります。ただ、議会として民間の事業に対する可否を議決することはできません。このようなことから、議会が請願に直接応えることはできません。環境アセスに入る前の現段階で出来るのは、市民の不安に寄り添うことだけです。
 ただ、議員として、どの様な施設が出来るのか、どのような影響があるのか、知っておく必要はあります。懸念する事案について共有し改善させる。その上で持続可能なまちづくりのため、共生・協調して新たな未来を創造していくことが大切だと考えます。
 議会に今できることをする。具体的には、関係地区へ出向いて、住民が懸念する事象について、過去の経験を下に話を聞かせていただくこと。地域の生態系について知見を持つ専門家等の意見を伺うなど、委員会で提案しました。12月10日に配慮書が公表されたことで、事業者も地元住民等から意見を聞く機会を設けることになっています。同様のことになるかもしれませんが、できるだけバイアスの掛からない状況で、議会として冷静にご意見を聞くことが出来ればと考えています。
 今後、状況が進展する度に、市民の皆さんや事業者からご意見を伺い、議会として出来ることについては取り組んで参ります。

 

 

市政運営に関する要望書を提出、市長と意見交換

【要望事項】

 1.地域経済立て直し優先の政策と必要な財源確保

 2.災害に強い持続可能なまちづくりの実現

 3.未来を展望した子育て支援

 4.「生きる力」を育む、教育環境の充実

 5.助かる命を助けられる医療ネットワークの構築

 6.厳しい状況を乗り切るための経営支援の充実

 7.アフターコロナを見据えた観光地域づくり

 8.ブランディング戦略による高付加価値化と市民所得の向上

 9.地産地消型エネルギーの推進

10.庁舎施設の複合化並びに合同庁舎化の検討

 

以上、要旨はこちらへ。

 

 

財政運営の在り方について

 12月定例会で、財政運営について一般質問をおこないました。課題として取り上げたのは、市長がマニフェストに掲げているふるさと納税と一次産品の付加価値を高める食品加工施設です。ふるさと納税は、令和3年度10億円、4年度20億円、5年度30億の目標を掲げ、市の歳入確保にとって大きく期待が寄せられています。一方の食品加工施設は、本市の豊かな農産物や海産物は、そのまま出荷されることが多く、規格に合わないと価値が下がります。加工することで、通販やふるさと納税の返礼品として付加価値を上げることが出来きます。
 良いこと尽くめのようですが、課題が無いわけではありません。
 

1.ふるさと納税の運用のあり方について

 京丹後市の予算規模は約350億円、ふるさと納税は令和2年度6億を令和5年度30億へ増やす公約を市長は掲げています。ふるさと納税は、「ふるさと応援寄付金」として一般会計に入る一方で、令和2年度は返礼品として約45%、事務費約5%が必要となります。ほかにも返礼品の商品開発を促す政策に係る経費と関連する補助金なども考えられます。
 しかし、ふるさと納税は、「寄付金」です。さらに、返礼品を目的とする方も多いことを考えると、激しい返礼品競争の中で、毎年同様の売上かあると限りません。返礼品は、ふるさと納税に比例しますが、事務費は固定です。不確定要素の大きい寄付金を当てにした予算編成は、市の財政規模を見誤るリスクもあります。ふるさと納税に関連した収支の見える化は必要です。
 

2.投資的事業のあり方について

 京丹後市では、主に缶詰を主力とする食品加工支援センターの整備に約1億5000万円を投じる計画があります。
 農家や水産事業者の後継者不足等の問題から、収益向上のため全国的に6次化に取り組まれてきました。現在、食品加工施設を整備するにはHACCP基準をクリアする必要があることから、小規模な事業者では施設整備は困難です。京丹後市においても、農産物や海産物など1次産品の加工が課題としてあります。
 しかし、この計画(案)の問題は、民間の食品加工工場と何ら変わらない事業を行うにも関わらず、市が100%施設整備を行い指定管理施設とすることにあります。施設運営は、地場産業振興センターが受託し、センターから民間事業者が加工を受託することになっています。運営経費は、加工賃で捻出する計画で、生産者からの試作品のほか、量産も引き受けるとしています。生産者から材料とレシピを受け取り、加工賃で受託。缶詰に加工し後、商品の販売は生産者が行うことになります。加工を受託する民間事業者は、設備投資の負担なく事業を開始でき、商品在庫のリスクもない。指定管理施設である以上、設備更新は再び税で賄うことになります。

 他にも、自然あふれるビジネスセンターは、テレワーク環境を有する施設・事業者や関連機関が一体となって、多様なニーズに対応したテレワーク・ワーケーションプログラムを開発して、都市部からの新たな人の流れをつくる「京丹後型ワークスタイル」の構築を目指すというものです。令和3年9月から令和8年3月末までのコディネート委託料として約6790万円を予定しています。
 ただ、このセンターの構想を提案した推進戦略策定検討会のメンバーが、コーディネーターを受託しています。建物でいえば、基本設計した業者が、建築を請け負うようなもの。市は「問題ない」としていますが、その選定の在り方を市民がどう判断するは別です。「李下に冠を正さず」とのことわざがあるように、疑念を招くようなこと選定に問題があります。

 市内産業に必要なものであっても、事業の提案に至るまでの過程や事業者の選定について疑義があれば賛成できないこともあります。また、市と民間事業者のリスク分担の考えは重要です。特に受益者負担の原則は忘れてはならないことです。どこに公益性があるのか。それが妥当かどうか説明責任が問われます。

 

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2022/01/01 議会報告WEB版   谷津 伸幸

いよいよ、新議会が本格的に始まります

4月の選挙を経て、はじめての定例会です。

 市議会については、本年度より定数20名となり、新たに6名の新人議員を迎えます。さらに今回は、私も含め政党の公認・推薦をうけて当選したが過半数を超えました。「超党派で…」とは言うものの政党は「共通の政治上の理想・目的を持つ者」で組織されていることからも、議会での調整には困難が予想されます。今期前半の議会人事では、私は予算決算常任委員長を拝命することになりました。議会運営を円滑に進めるため議会人事は事前に全会派で調整されるのが通例です。しかし、今回は事前の調整と全く違う人事案が上程される事件が起きました。議員間の信頼関係を損う極めて遺憾な経過ですが、議会の議決として真摯に受け止め、職責を全うしたいと思います。

 一方、今回の選挙で、三崎市政から中山市政に変わしました。「独善的に政策を進めていた以前の市政」に戻るのか。それとも以前の市長時代の反省を踏まえ、市民や議会の理解を得ながら「一人で決めず職員とも思いを共有して政策を進める市政」に転換するのか。しっかりと見極めたいと思います。

 また、政策については、大衆迎合するばかりでもダメ、かといって、国の事業をなんでもかんでも取りに行くのもダメ。長期的な展望を持ちながら、国や府へ働きかけ連携することで財源を確保し、自助・共助・公助を確りと考え、限られた財政の中で優先順位をつけながら政策を進めていく。さらに、新型コロナウィルス感染症の影響による公衆衛生や経済の対策は、喫緊の課題であり、長期的な展望の中で優先的に取り組む必要があると考えています。

6月定例会の一般質問

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  • 発言者  : 谷津 伸幸
  • 発言順位 : 5番 
  • 日  時 : 6月24日 午後3時頃~ 
  • 議  題 : コロナ禍でのマニフェスト実現と財政運営について

 

 

私は、選挙において「コロナに負けない!みんなで乗り切る」。その事を訴えて参りました。全国的に非常事態宣言が出されていた中で、夢や将来ビジョンも大切ですが、その前に喫緊の課題である新型コロナウィルス感染症の影響による公衆衛生や経済の対策に、優先的に取り組み、長期的な展望に繋げていく必要があると考えたからです。とはいえ、京丹後市がなんでもかんでも財政支援できるほど財政が潤沢ではないことは、多くの市民が知っている事実です。個人がやるべきこと、地域や会社などで取り組むべきこと、行政でしかできないこと。自助・共助・公助の判断をしながら、優先順位をつけて取り組む。国・府との連携による財政支援を最大限要請した上で、基金を取り崩す、市債を発行するなど、最大限財政出動するべきだと考えています。当然、その間はマニフェストに描いた夢や将来ビジョンを先送りにすることも英断です。最低限そうした財政規律が必要だと思います。

 

こうした観点から、6月定例会では、『コロナ禍でのマニフェスト実現と財政運営について』をテーマに一般質問を行います。

  1. 財政の現状認識
  2. コロナ禍での財政運営の考え方
  3. コロナ禍での市長マニフェストの実効性

以上、3つの論点を考えています。

 

本市の財政状況は、平成29年、30年の災害等の対応もあり厳しい状況にあります。人件費・扶助費や公債費などの義務的経費、道路など公有財産の維持管理・ごみ処分場などの大型建設工事といった投資的経費、止めることのできない特定事業を健全に行うための特別会計や受益者負担を原則とする企業会計への繰出金などの歳出があります。一方の歳入では、使途を制限されない自主財源が約4分の1で残りは国・府や市債に依存する財源です。その依存財源も、交付税の特例措置は終わり合併特例の低減対策基金も令和7年まで。有利な財源としていた合併特例債は令和6年、過疎債は今年度末に期限を迎えます。当然、歳出の抑制は行いつつ財源の確保に全力をあげることは言うまでもありません。第1次中山市政でも前三崎市政でも、その事には十分取り組んできて今があると考えています。

 

一方、公共施設の使用料等の見直しは、合併来16年を経過してもなお見直されていないばかりか、消費税の相次ぐ増税にも据え置いたことから、実質的に議会承認なく値下げされているだけでなく、市外の方が本来負担すべき費用を市民の税金で負担しているのが現状です。第1次中山市政時代に議会からの指摘を受け「消費税10%の際に見直しを検討する」としたものの、前三崎市政での提案では議会の反対多数で、再度先送りされた経過もある。財政運営を考えれば、今後の受益者負担の在り方についても確りと市民に示す必要があると考えます。

さらに、コロナ禍では、多くの市民が利用する公共施設等については、日常管理のガイドラインの見直しに加え、万一、感染者が発生した場合の行動ガイドラインも策定する必要があります。施設管理をしながら、そうした衛生管理を徹底するには、新たな費用も発生することから、その費用捻出のため指定管理料や施設利用料の見直しが必要です。必要な施設として、指定管理等を行っている以上、このことも避けて通れません。

 

先に行なわれた臨時会における質疑等では、中山市長の言われる「前市長時代の反省」は、残念ながら感じられませんでした。

市民の付託を受けた市長のマニフェストは一定の評価を得たモノですが、他方で全てのマニフェストを『了』とした訳でも、全ての市民が中山市政を『了』とした訳でもないことは言うまでもありません。非常事態においては、コロナ対策や生活支援と云われれば議会としては反対しにくいモノです。だからこそ、財政規律については確りとした考え方を持ってブレずに実行して欲しいと思います。

市民や議会の理解を得ながら、市長が一人で決めず職員とも思いを共有し進める市政を本気で実現して頂き、市民・議会・市長をはじめとする職員がOneチームとなって、コロナ危機を乗り越えていきたいと願ってやみません。

そうした想いから6月定例会の一般質問では、全ての政策を左右する財政運営の考え方について、中山市長の考えを質したいと思います。

私の一般質問の中継が、CATVやインターネットでご覧頂けます。

是非、ご覧ください。

 

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2020/06/11 一般質問   谷津 伸幸
タグ:予算決算

未来へ、4つの提言(市長要望提出)

 謹んで新春の寿ぎを申し上げます。

 昨年は、2期目の折り返しの年。所属会派の丹政会(新人2名と元議長を含む4名の自民党議員で構成)の代表を拝命しました。9月定例会では、議会基本条例をはじめ、政務活動費条例、定員定数条例などを検証し、議会改革を進める議会改革特別委員会の委員長を拝命することとなりました。

京丹後市議会の目指す議会は、

① 市民に開かれた議会

② 市民参加を推進する議会

③ 市民に身近な信頼される議会

議会改革は、こうした理想とする議会の実現に向けてPDCAを回す議会の取り組みです。

 議会の一端を担う者として、未来を見据えた視点にも配慮し様々な提言を行って参ります。皆様のご指導ご鞭撻賜ります様、よろしくお願いいたします。

 

国は、今後の検討課題として、個々の市町村が行政のすべてを単体で担わなければならないという考え方を廃止し、組織間で有機的に連携するための方策づくりや、都道府県・市町村の2層制の柔軟化、業務プロセスの標準化・共同化などを挙げ、2040年頃の自治体の姿は、サービス・プロバイダーからプラットフォーム・ビルダーへと転換、住民が自らの意思で戦略的に構築など、自治体行政そのものが大きく変わるとしています。また、高齢・人口減少社会を見据え、生活圏に小さな拠点を形成し、ネットワークで周辺と繋ぐ「コンパクト・プラス・ネットワーク」という都市計画の考え方が示されています。

 本市でも、総合計画5つの重点項目など、様々な政策を展開しています。

地元有効求人倍率 0.98倍(H26) → 1.53倍(H29)

農業新規就業者数  15名(H26) → 39名(H29)
                   ※Iターン13名、Uターン15名、市内11名

漁業新規就業者数   9名(H26) → 49名(H29)
​                   ※自営型10名、雇用型7名

観光入込客数   176万人(H26) → 218万人(H29)

宿泊者数     35万人(H26) →  35万人(H29)

など、地域の経済状況は好転し、一定の成果も得ています。しかし、介護・福祉をはじめ、建設業、製造業などでも人手不足が新たな課題として現れています。一方で過度な東京への人口一極集中や働き方改革なども相まって、地方への関心が高まり、政策的にも地方への移行が始まっています。今後は、高速道路の延伸効果などインフラ整備が進み、テレワークの導入などで多くの仕事が、京丹後市でも可能になります。

 前例踏襲的な考えや既成概念に囚われるのではなく、技術革新や価値観の変化など、社会の変化に対応することで、人口減少に歯止めが掛かり、子どもたちが将来帰ってくる京丹後市を目指していきたいと考えています。そうしたことから、丹政会で毎年行う市長要望についても、国の動向や社会の変化も踏まえた新たな価値観で、次の4項目で行いました。

平成31年度市長要望
平成31年度市長要望

① 政策の優先順位とプライマリーバランスの堅持
② 未来を展望した子育て支援と教育環境の充実
③ 「観光のまちづくり」の推進に向けた組織体制の充実
④ 高齢・人口減少社会を見据えた新市役所の検討
(詳細は後述)

 政策の優先順位をつけてプライマリーバランスを堅持することを財政運営の基本としたうえで、様々な政策を効果的に展開する必要があります。いづれの政策にも、人口減少に歯止めを掛ける要素が不可欠です。

 「小中一貫教育」や郷土愛を育む「丹後学」、本市の豊かな食材を活かした食育など、他市に先駆けた取り組みに加え、地元の民間人材を教育の現場に登用するなど、地域に開かれた学校運営で、「京丹後らしさ」を織り込み、市内外に発信することが「京丹後で子育てしたくなるまちづくり」につながるのではないかと考えます。

 さらに「まちの魅力」を効果的に発信できるのは観光ではないかと考えています。しかし、既存の観光協会では、旧町域毎の「観光」への意識の違い。人材が定着しない状況など、十分に機能していません。一般的な史跡名勝を回るだけの観光ではなく、京丹後の農業や漁業、地域の産業も含めて、日々の暮らしが魅力的であること。丹後を訪れると「人生が豊かになる」そうした仕掛けを事業者が主体的に取り組めるようなマネジメント力や体制整備が重要にまります。

 今の庁舎再配置は、「箱」としての庁舎をどうするのか、というものです。当然、既存施設を庁舎として活用することは、負担軽減や、空き施設の利用の観点からも否定するものではありません。しかし、合併以来「市民局機能を含めた将来の市役所の在り方がどうあるべきか」という課題は、議論されないままです。冒頭にも書きましたが、2040年頃には自治体の在り様が今とは大きく変わっているかもしれません。高齢・人口減少社会に必要なパラダイムシフトを見据え、将来的な新市役所の在り方について調査研究し、新たな方針を示す必要があると考えています。

 人口減少に歯止めを掛けることは必要不可欠であり、一定の人口を維持することでに生活圏を形成することができます。ところが、これまで公共投資を控え、リーマンショック以降、製造業でも技術者を育成することが難しい状況になってしまった。その結果として豪雪や豪雨災害に対応できる企業や人材を失い、「京丹後には仕事がない」という先入観が広まり、若い人達が帰って来ない状況が続き、地域が疲弊する悪循環が起きているのではないでしょうか。行政として、公共投資など一定の将来見通しを示すことで、地元企業が人材育成のための雇用意欲を喚起する必要があると考えます。そして、市民一人ひとりが「まちの魅力」を再認識すること、それを子ども達に伝え、そして発信することで、人口減少に歯止めを掛けることができるのではないかと考えます。

 子ども達が都会に夢見て京丹後を離れることは自然なことですが、多くの子ども達が「いつか故郷の役に立ちたい」という気持ちを持っているのも事実です。わが子には「いつか帰って来い」と言って欲しいと思います。自戒の念を込めて。

 

市長要望【概要】

  1. 政策の優先順位とプライマリーバランスの堅持

厳しい経済状況の中、税収の減少は避けられない。限りある財源を効果的に配分するために、政策の優先順位が明確にして、メリハリのある予算編成と、「改革」から「経営」へ軸足を移した新たな行政経営が必要である。

喫緊に必要となる政策を確実に進める上でも、事務事業の廃止や縮小を次の視点で積極的に検討されたい。

① 既存事業をゼロベースで再検討。         (必要性)

② 行政が行う役割は終了していないか。     (公共性)

③ 効率、効果、範囲の適正化の追求。       (適正化)

地方交付税の逓減など、自主財源の乏しい本市にとって歳入確保は難しい課題である。

国・府からの支出金については、新しい制度や緊急対策など変化のめまぐるしい状況であるが、情報収集に努められ、制度を熟知した上でしっかりと活用され、市役所一丸となって歳入の確保に積極的に取り組んで頂きたい。

  1. 未来を展望した子育て支援と教育環境の充実

未来を担う子ども達は本市の宝であり、本市が目指す「子育て環境日本一のまち」の実現には、子育て・教育の支援や環境の充実が重要である。

学校教育においては「生きる力」の育成を進めているが、学校・家庭・地域の連携は十分とは言い難い。教科化される英語、必修化されるプログラミング教育において民間の登用なども検討、地域の優れた資源である人材を教育現場に取り込むなど、門戸を広げることも必要である。

「小中一貫教育」や郷土愛を育む「丹後学」、本市の豊かな食材を活かした食育など、本市にしかできない特色ある教育は、引き続き進め、国が極めて重要と位置づける環境教育についても、他市に先駆けた取りくみをしていただきたい。

子育て・教育の充実に「京丹後らしさ」を織り込み、市内外に発信することが「京丹後で子育てしたくなるまちづくり」つながると考える。

  1. 「観光のまちづくり」の推進に向けた組織体制の充実

今や「観光」は国の基幹産業として位置づけられ、2020年のオリンピックを見据え、全国的に様々な取り組みがなされている。本市においても、持続的な経済発展のための京丹後市観光立市推進条例のもと「旬でもてなす観光のまちづくり」を掲げ、様々な政策に取り組み、海の京都DMOとの連携で広域的な観光圏の形成が進められている。

京丹後市観光協会おいては、域内支部の「観光」への意識格差が大きく、課題解決に対するマネジメント能力の不足が顕在化、組織運営にも影響している。

本市の「旬でもてなす観光のまちづくり」の推進のためには、それぞれの地域の自主・自律性を尊重しつつも、市域全体としてマネジメントできるよう民間企業からの登用や職員派遣も含めて、京丹後市観光協会の体制を大きく見直す必要があると考える。

  1. 高齢・人口減少社会を見据えた新市役所の検討

国においては、AI・ロボティクスなどを活用する「スマート自治体」や公・共・私が相互に協力関係を構築する「プラットフォーム・ビルダー」など新たな自治体行政の基本的な考え方が示された。都市計画においては、生活圏に小さな拠点を形成し、ネットワークで周辺と繋ぐ「コンパクト・プラス・ネットワーク」が示された。

将来の新しい市役所の在り方については、本市単独ではなく広域的な地域の将来像、AI・IoTなどのイノベーションも踏まえ、検討されるべきであり、一部機能が重複する府の施設(広域振興局など)も同様とである。人口減少が著しい地域にあっては将来、更なる地域合併の可能性は少なくない。府と市が一体となり利便性の向上、公務の能率の増進を鑑み、合同庁舎の実現に向けて検討すべきであり、京都北部地域での地理的優位性が担保できるものと考える。

既存施設を庁舎として活用することは、負担軽減や、空き施設の利用の観点からも否定するものではない。しかし、市民局機能を含めた本庁舎整備をどうするべきかは課題である。さらに、高齢・人口減少社会に必要なパラダイムシフトを見据え、将来的な新市役所の在り方について調査研究し、新たな方針を示す必要がある。

 

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2019/01/01 議員活動   谷津 伸幸

市民が輝き地域が輝くまちへ、市長の政治姿勢を問う

 一昨年、「市民の声で、市政刷新!」「リセット京丹後」を掲げ三崎市政が誕生しました。

その後、三崎市長のもと、市民が輝き地域が輝くまちの実現に向けて第二次総合計画の見直しが行われました。また、先の3月定例会では本庁機能集約化についても、増築棟建設から既存建物の活用へと大きく見直され、市政の転換が図られてきました。

 6月定例会の一般質問では、三崎市政の2年間を総括しました。

 

一般質問の要点は以下の3点。

 

「改革」から「経営」へ

 目新しいだけの「改革」ではなくて、行政が真に行うべきかどうかを精査して、真に必要な政策に注力すべきではないか。

 

京丹後市発足の原点である合併協定書をどう考えるのか

 庁舎はじめ様々な公共的施設は、一か所に集約した方が効率的な行政運営となる一方、地域経済に与えるインパクトは大きい。

 合併で目指したまちは一局集中ではなく、住み慣れた地域で安心して暮らせるような、旧六町それぞれの活性化だったのではないか。

 

「市民が輝き地域が輝くまち」グランドデザインは

 庁舎等の跡地活用を含めて、旧六町それぞれの地域をどうしていくのか。自分ごととして何ができるのか。多様な住民サービスを全て行政で賄うことには無理があり、現実的ではない。これからは市民と行政で協働しての住民サービスを提供し、住みやすい地域をつくるべきではないのか。

 

〔 詳細については、以下に記載しています。〕

「改革」から「経営」へ

丹政会(谷津が代表を務める会派)では、前市長から一貫して、以下の視点で要望してきました。

 先ずは、生活基盤を支えるための地域の経済対策。そして、介護や医療など市民の安心・安全の確保。その為に必要な道路などのインフラ整備促進です。また、少子化、人口減少に歯止めを掛けるためには、子育て支援や教育環境の充実により、若い人達が暮らしやすく、ふるさとで安心して子育てできる環境づくりが不可欠だと考えています。

 その一方で、決して豊かとは言えない本市財政に鑑み、喫緊に必要な政策を確実に進めるために、既存の事務事業については、以下の視点で不断の見直しが不可欠です。

  1. ゼロベースで検討。
  2. 行政の担う役割が終了していないか。
  3. 効率、効果、範囲の適正化の追求。

この三つの視点で廃止や整理縮小を検討し、政策の優先順位とプライマリーバランスを堅持して、「改革」から「経営」へ軸足を移した新たな行政経営が必要と訴えてきました。

 

どのような事業がスクラップされたのか

<スクラップ事業>  合計87項目 約3億5918万円

新シルク産業機構の設立、箱石-浜詰砂浜遊歩道の延長、生涯活躍のまち構想検討経費、よしもと京丹後劇場の開催経費、総合窓口案内(峰山庁舎)配置、ビーツスポーツフェスティバル補助金、京たんごスポーツ新聞、わかりやすい今年の予算、企業アイディアコンペ、名古屋事務所運営経費、チャレンジショップ補助金、エコエネルギーセンターの廃止など。

 

<抑制した事業>  合計148項目 約2億8702万円

 

 

平成28年度~平成30年度当初予算までの事業で、財政規模に見合わない事業や効果が見込めない事業などが見直しとなり、成果が十分に検証できない事業などが廃止された。

 

国・府の財源を活用した施策とその進捗状況は

<網野地域内水対策事業>

H28に内ケ森排水区が完成、H29から小栓川排水区に着手。台風18号(平成29.9)災害などで、国へ優先配分の緊急要望を行い、要望通り確保し事業が進捗している。

 

<山陰近畿自動車道整備>

三崎市長が近畿ブロック及び京都府の推進協議会会長に就任し、積極的に国へ働きかけた結果、大宮峰山道路の用地買収に先行して実施する地籍調査について目標通り平成31年に完了の目途がついた。さらに網野ICまでの地籍調査を大幅に前倒し着手できる補助金の配分も受けることができた。

 

<移住支援センター設置>

5月9日に網野町内に丹後暮らし探究舎として開所した。移住支援員2名が常駐している。オープン一ヶ月だが移住希望者等から四十数件の問い合わせがあり、現地案内などの対応をしている。

 

<その他の主な事業>

高校までの医療費無償化、久美浜駅再生プロジェクト、ふるさと魅力発信映像作成、ふるさとバス事業、保護者・教員向けの企業見学ツアーなど予定。

 

厳しい財政状況の中で、国・府の財政を確保することは、財政力が極めて低い本市において必須の課題である。既存制度においては配分額の維持・増額を要望し、新たな制度であっても「事業があるから施策を実施する」ということではなく真に必要な施策を実施するため、常に情報収集に努め財源確保してきた。

 

〔 谷津の視点 〕

 私が言うまでもなく、行政経営の評価指標は利益の獲得ではなく、住民福祉の向上です。

 このような視点から地方行政を仮に民間企業に例えるなら、行政は会員制サービスを提供する会社に例えることができます。市民という会員顧客に対して、住民サービスを提供しています。会費となるのが、税金や受益者が負担する利用料であり、独自のサービスを提供するための財源となります。

 会員数が多ければ提供できるサービスの充実も可能ですが、いくらサービスが多くても、その満足度が低ければ肝心の会員数(人口)を増やすことはできません。ただ、民間企業と違い行政には、ゴミやし尿処理といった環境衛生の保全など、対価が得られないにも関わらず自治体の義務とされる事業があります。

 よく言われる「行政は、民間企業のような経営感覚を持たないといけない」との指摘は、ある意味正しくて、ある意味で誤りだと考えています。

 限られた予算の中で、やるべきこと行い住民満足を得るためには、国・府の補助事業に施策を合わせるのではなく、市民と一緒に創りあげた事業に、国・府の事業を適用させる工夫も必要です。また、一定の役割を終えた事業や市民ニーズの拡張に伴い肥大した事業、時代に合わなくなった事業など、今ある事業についても定期的に見直しが必要です。特に新しい事業を始める場合には、政策の優先順位とプライマリーバランスを堅持し観点からもスクラップ&ビルドが必要です。

 

 

京丹後市の原点である合併協定書
         どう考えるのか

 14年前、独自の価値観や文化を持つ6つの町の特色を残しつつ、一つの新しい市(まち)を創る選択がなされ、本市発足の原点ともいえる合併協定書と新市建設計画が策定されました。

 

現在の新市建設計画はどうなったのか

 現在、京丹後市の最上位計画は総合計画です。総合計画は新市建設計画を元に作成され基本的な部分は引き継がれている。また、合併市町村にのみ認められている合併特例債は、新市建設計画が根拠になることから、新市建設計画は特例債が活用できる間は存続している。但し、新市建設計画は、過疎計画などと同様に施策実施の財源確保のための計画という考えであり、計画に載っていない新たな状況が発生した場合、修正が必要であれば予め知事と協議して、議会の議決を経て変更するものとしている。

 

合併協定書に基づく手続きは必要ないのか

 合併後、旧町ごとに新市市長に提言できる組織として、地域振興協議会が条例で設置された。地域振興協議会条例については、平成19年3月一部改正、所掌事務として市長の諮問に応じて答申すること、提言については必要に応じて行うことに内容を改められた。平成22年3月には地域まちづくり協議会条例が廃止され、新たにまちづくり委員会条例が制定され今に至っている。

 新市建設計画の変更について「あらかじめ地域振興協議会の意見を聴く」となっているが、現在では地域振興協議会はなく、但し書きの「状況の変化があれば、新市において検討し調整する」によって進めてきた。

 

庁舎整備に関する要望書が提出された経緯は

 本庁舎整備再配置は、平成24年度まちづくり委員会の答申に基づき検討が始まった。平成25年の弥栄病院改修に伴う弥栄庁舎取り壊しと市民局移転を進める中で、平成26年の網野庁舎についても、取り壊しと本庁機能の集約について網野区長連絡協議会へ説明。平成27年に庁舎整備検討委員会で集約化基本方針に基づき、峰山庁舎に増築棟を建設する方向で進めてきた。

 三崎市長から既存施設の活用が示され、平成29年12月、網野庁舎別館の耐震調査結果に基づき、商工観光部をらぽーとに緊急移転すること、峰山庁舎に増築棟を建てるのではなく既存の庁舎を活用した集約化へ方針転換が示された。平成30年1月になり、網野区長連絡協議会で庁舎整備にかかる要望書が議論され、2月に市長方針を説明したが、2月23日付で要望書が提出された。

 

網野区長協議会の要望書(要約)

 市役所庁舎整備に関する本庁機能の移転計画を発表されたが、この移転計画については様々な点で問題点があり、特に網野庁舎から本庁機能をなくする点については、決して承服できないところから、網野町区長会の総意として、市長に対して「市役所庁舎移転計画に係る要望書」を提出した。

①網野庁舎の建設部・商工観光部・上下水道部を福祉事務所や大宮庁舎に移転することについて

 本庁機能がなくなることは網野町中心部の活性化やにぎわいの喪失につながり、まちづくりや交流等の面でも悪影響が出ることから、網野町区長会としては絶対に承服することができない。

 人口が最も多い網野町から本庁機能がなくなることは、本市の中心をなす南北軸から外れることになる。第2次京丹後市総合計画でも3町が市街地ゾーンとして位置付けられ、都市計画地域にも指定されている網野町から本庁機能がなくなることは市内の均衡ある発展の方針に反する。

 合併時において網野庁舎に3部を配置した目的は、観光部門は海岸がある町へ、下水道部は整備が一番遅れている町へ、上下水道部と建設部は一緒にいることが効率的であるとの方針から決定されたもので、現在でも変更するべきではない。

 これらの理由から、網野町にこれまでどおり3部を配置することを要望する。

②移転に係る経費について

 市の移転計画では、福祉事務所の後に建設部と商工観光部が入るために、健康長寿福祉部を丹波小へ、大宮庁舎に上下水道部へ移転する計画で、多額の経費が必要となるほか、建設部と離れることになり、市道管理などの面で密接な関係が必要とされる両部の日々の業務に支障や不便が生じることが懸念される。

 代案として、アミテイ丹後と別館(研究開発棟)の改修や増築を行い、上下水道部、建設部、商工観光部が入る庁舎を整備することによって、経費の大きな縮減が図られるものと思っている。また、安価な軽量鉄骨製の建物をアミテイ丹後の敷地内に建設することも一案です。このことで、大宮庁舎や福祉事務所の改修が不要となり、すべての移転に3年間かかるとされている期間も大幅に短縮できる。商工観光部の一時的な「らぽ-と」移転も短期間で済むことから、網野町の住民が強く望んでいる「らぽ-と」の早期使用についても住民の要望に応えることができる。

 

〔 谷津の視点 〕

 庁舎をはじめとする様々な公共的施設を一か所に集約する方が、低コストで効率的な行政運営ができますが、合併で目指したまちは一局集中ではなく、住み慣れた地域で安心して暮らせるような、旧六町それぞれの活性化だったと思います。建物が古いから、効率が悪いから、潰して集約すればいい。という簡単な話ではありません。

 本庁機能が無くなると、100人近い職員が移動することになります。そこそこの規模の企業が地域から撤退するのと同じくらい、地域経済に与えるインパクトがあります。また、隣接する網野幼稚園も31年3月末で廃止されます。地域の拠点となる中心地から活気が無くなることによる地域全体への影響の大きさ。更には、負の連鎖による人口減少。合併の時に危惧されたことが、現実として見えてきたことへの危機感の表れだと思います。

 本庁機能が無くなるという説明だけでなく、これを契機として、庁舎の跡地利用も含めて、この地域をどうしていくのか、自分ごととして何ができるのか。お一人お一人が考え議論することが必要です。

 

 

「市民が輝き地域が輝くまち」
      グランドデザインは

 合併当初に比べて、事務量が過剰になり、職員のマンパワーや財源は不足しています。前市政で広げた様々な事業を精査していかないと、新しいことも始められません。実際に、この2年間で多くの事業を整理統合されましたが、政治は厳しい現実だけでなく、明るい未来を魅せることも必要です。

 将来に希望が持てなくては、親として子どもたちに「帰って来い」と言い難いだけでなく、子どもたちも帰ってきません。「市民が輝き地域が輝くまち」イメージを、市民と共有していくことが大切です。

 

「市民が輝き地域が輝く京丹後」とは  (市長答弁要約)

 第二次総合計画を如何にして具現化するか。「市民と地域がキラリと光り輝くまち」をテーマに、5つの重点項目を掲げ、あるもの探しの視点で、新たなまちづくりのステージの歩みを進める。

 それぞれの地域には自然、歴史・文化、食など、光り輝く地域資源が存在している。先人から引き継いだ素晴らしい資源や宝にあふれているまちを守り、発展させ、次の世代へしっかりと引き継いでいくことこそが、我々の大きな役割であり、市長としての責務と考えている。

 地域力を高め、若者が希望にあふれるまち、京丹後に誇りを持てるようなまちづくりを進めていきたい。

 

京丹後市の将来像、そのグランドデザインは (市長答弁要約)

 まちづくりは、市が独自でできるということではない。行政の仕事としては、民間の活力をいろいろな面で支援できる基盤づくりを先ずは整えることだ。その中で、民間の皆さんが、それぞれの考えで事業に取り組んでいただける。

 現在、山陰近畿自動車道の大宮峰山道路が順調に進んでおり、将来に向けたまちづくり、都市拠点の在り方を検討する時期が来た。この高速道路建設の進捗に遅れないように考えていかなければならない。

 その基本の一つに、都市計画マスタープランがある。大宮峰山ICのあたりのエリアを都市拠点と位置づけ、旧町の6つの市街地を地域拠点と位置付けている。一方で、地域拠点を構成する旧町のエリアの中には、過疎化や高齢化が進行し、集落自治の維持・継続が困難な状況にあり、地域集落が有する様々な機能を補完し合うような持続可能な地域づくりの仕組みを進めている。将来的には、都市拠点と地域拠点を交通インフラでネットワークで繋ぎ、地域全体が賑わっていくまちづくりを進めていきたい。また、森本工業団地への問い合わせも出てきて、具体的に進めて頂ける状況にある。山陰近畿自動車道を早く先に進めていくことが、事業者の皆さんが経営を継続的に発展させて頂ける大変重要なものであり、それと合わせて持続可能な地域づくり、まちづくりを進めていくことが必要である。

 これから市の人口は恐らく人口推計でいくと、どんどん減ってくる。高齢化で担い手が不足して、自治機能が弱体化してくる中で、お互いに協力関係を構築しなおすことが必要である。ハードの基盤整備は当然、市で取り組むべきことだが、今まで行政で賄ってきた市民サービスが出来かねるようなところが出てくるかもしれない。おそらく職員は減ってくる。であるならば、どうするのかということで、いま持続可能な地域づくりを進めている。 

 制度としては、市が介護などは保険者としてやっていくが、制度からはみ出る部分、市ではできない地域でしかできない部分が今でもあり、その分担をお互いに協力関係をつくっていく。それが持続可能な地域であり新しい市政である。地域で補完しながら、その地域に住み続けていく。新しい形態として、市と地域住民が協働という対等の立場で、ソフト的な基盤をうまく組み合わせることが必要だ。お互いがお互いの立場を認識し合い、出来ることはそれぞれの立場でやっていく。ということをしていかなければならない。そうすれば、住み慣れた地域で生活し、子育てもして、安心して暮らせる。

 

〔 谷津の視点 〕

 京丹後市は、他の市町と比べても、地域の自治会活動だけでなく、様々な団体が地域振興や活性化などの取り組みが自発的になされています。こうした現状も踏まえ、私は「民間ができることは民間で、市民ができることは市民で、地域ができることは地域で、それでも出来ないことは行政と一緒にすべき」と考えています。

 多様な住民サービスを全て行政で賄うことには無理があり、現実的ではありません。これからは市民と行政で協働しての住民サービスを提供し、住みやすい地域をつくるべきではないかと考えています。

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2018/06/29 一般質問   谷津 伸幸

当初予算の委員会否決を一転、本会議において僅差で可決!?

庁舎再配置事業で議論紛糾!

 平成30年3月定例会は、2月26日から3月29日までの31日間の会期として開催され、平成30年度の当初予算が僅差で可決されました。

 昨年秋の台風被害の復旧を優先して取り組む事業はじめ、各地域集会施設整備費補助金、移住定住対策、医療・介護人材確保のための奨学金、通学路や歩道の安全確保のための改良工事、小学校の空調化事業など、市民生活にとって重要な事業が当初予算には盛り込まれていますが、庁舎再配置事業を争点として議会が紛糾しました。

 

※掲載記事中に、事実と異なる部分や批判めいた表現がありましたので訂正しています。

また、関係各位におかれましては、配慮が足らず多大なご迷惑をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げます。

 

 予算委員会では、当初予算に対する修正案が提出され否決、原案も否決されました。執行機関では予算委員会での議決を受けて暫定予算を準備する騒動になりました。「当初予算の否決」それによる市民生活への影響は計り知れません。実際には、市長が暫定予算を組むことで、市民への影響は最小限にとどめられますが、当初予算の否決は市長不信任を意味することから、政策的な事業は抑制的になると思います。
 賛成、反対のいづれにしても、議員ならば、意見交換などで問題とする論拠を示して、本会議で議論を尽く必要があると思います。

 

 会期冒頭の審査では、修正箇所では大した論点が出ていなかったように感じていましたが、代表質問と一般質問を終え、一転して、庁舎再配置事業を論点として、一部の議員から修正案が提案されました。

[修正部分 原案の趣旨]

 前市長が進めてきた増築棟建設を中止し、今ある既存施設を活用することで歳出抑制を図り、財源を市民サービスに回す。新庁舎建設については、既存施設の耐用年数がある間に議論するとして、以下の改修に関する基本設計・実施設計などの予算が提案された。

①耐震に問題があり使用していない網野庁舎本館を廃止。

②旧五箇小学校を公文書の保管所として整備。

③福祉センターにある本庁機能を丹波小学校へ移転、福祉の拠点として整備。

④峰山庁舎、大宮庁舎の空調等の改修。

⑤福祉センターの耐震・雨漏り・空調等を改修し、網野庁舎にある本庁機能を集約。

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 会議の中では、庁舎再配置問題の本質的な論点整理が十分ではなかったので、以下に補足します。

 庁舎再配置問題の本質は、峰山の皆さんが「増築棟の建設中止」を事後承諾だと感じるのと同じように、網野の皆さんにとっては「網野庁舎の本庁機能移転」について十分な説明が無かったと感じています。そうした背景から、網野町区長会から「要望書」が議会へ提出がありました。

 しかし、議会が、審査中の予算に関連する「要望書」の内容について審査することはできません。これを先に審査してしまうと、議会としての権能が阻害され、議会制民主主義が破綻してしまいます。

 但し、議会として議論できない訳ではなく、要望書も踏まえ「庁舎の在り方」については、議長に提案すれば幾らでもできたと私は思っています。

 本庁機能の集約化については、いま本庁機能ある地域にすれば、企業が撤退するのと同じくらい経済的なインパクトがあります。前市長が進めてきた増築棟建設は、そのことが市民を交えて十分に議論されないまま、効率化の視点から進められてきました。一旦、新庁舎を建設すると最低でも65年は庁舎が固定されてしまいます。今回の庁舎再配置は、そうした十分とは言えなかった市民や議会での議論をするための時間を設けるためにも、今使える施設を使うという提案です。

 

 庁舎は、1か所に集約する方が業務効率の向上を図れるというのは事実かもしれませんが、そのことが市民サービスの向上や市域の均衡ある振興に繋がるかどうかは別の問題です。将来的な人口動態や住民負担なども十分に考慮して、ある程度、市民の合意も得ながら方針を決める必要があります。

 

 「当初予算の否決をダメだ」とは言いませんが、その事の重大さは十分に自覚して行動しなければなりません。とはいえ、予算を全面的に賛成できない事案もあります。その場合「ここだけは認められない」という部分を明記して、修正案を提案します。

 

[修正案の趣旨]

 将来のまちづくりの最も重要な根幹である庁舎整備については、将来ビジョンや財政負坦、市民の将来負担を明確に示し、市民や議会の意見を十分に聞きながら進めるべきである。今回の庁舎再配置の予算については、以下の視点が欠けており、一度立ち止まって考えるべきである。

①市長の将来ビジョンが示されていないこと

②市民の声、議会の議論が軽視されていること

③今回の予算と増築棟の予算が整理できていないこと

④将来のことも考え市民の負担はどうなるのか

⑤丹波小学校の利活用に疑問があること

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今回、修正案は否決されましたが、修正案に賛成する保守系議員が原案の採決でとるべき対応は通常2つです。

 1つは、修正部分よりも、それ以外の部分が重要である場合、常識的には原案について賛成となります。

 もう一つは、その部分がどうしても認められない場合、原案の採決に参加しない、いわゆる退席の行動を取ることもあります。

 今回、第3の選択として、原案についても反対の意思表示をされました。それは修正部分がそれ以外の部分よりも重要であることを意味します。

 また、議決の前には、議員個々の意見を述べ議論することのできる意見交換を経て、その後、反対または賛成の賛同を求める討論を行います。議員は、本会議の意見交換で十分に議論を尽くす必要があります。特に原案に反対する場合には、意見交換などで反対理由を述べ、課題を明らかにするなど説明責任を果たさなければなりません。

 議会が可決した当初予算であっても、特に留意して欲しい事項については付帯決議をつけ、明文化することで、市長に対して疑義の残る事業を監視することができます。

こうした経過も踏まえ、以下の付帯決議を提案させて頂きました。

 

[付帯決議の趣旨]

 自主財源に課題がある本市にとって、積極的な財源確保は必要不可欠である。一方で、集約化により地域から本庁機能がなくなることで、市民が将来の地域づくりに、不安を覚えることも理解できるところである。

 将来の本庁舎の在り方については市民生活への影響も大きく、魅力あるまちづくりの視点での議論が必要である。議会の意見を踏まえ、事業執行については慎重を期すようここに求める。

①基本設計が完了した段階で、議会へ報告すること

②福祉センター老朽化等、庁舎整備にかかる長期財政見通しを示すこと

③庁舎再配置事業について、市民への説明責任を果たすこと

④庁舎再配置による関係地域への影響については十分配慮すること

⑤将来のまちづくり拠点の在り方について、市と議会で協議の場を設けること

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 残念ながら、この付帯決議にも反対されました。

反対の趣旨は、市として当然すべきものであり付帯決議に値しないというものです。付帯決議に示した5項目は、修正案に賛同した議員をはじめ多くの議員が議論の中で述べたものです。

 3月定例会では、様々なことが起こりましたが、本会議や委員会など公の場で十分な議論ができるよう心機一転、議会改革に取り組む必要性を改めて感じています。

 4月からは、所属会派の丹政会代表の任を請け、議員の資質向上に努めるよう志を同じくする仲間と研鑽を重ね参ります。

引き続き、ご指導ご鞭撻を賜ります様、よろしくお願いいたします。

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2018/03/30 議会報告WEB版   谷津 伸幸
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