議案審査等

審査の着眼点

6月補正予算を修正可決。議会の権能を発揮! 附帯意見も

S__6053918.jpg6月定例会では、本市の名誉市民である故野村克也氏の功績や考え・言葉(こころ)を後世に引き継いでいくため 、官民で組織する実行委員会を設立し、同氏の名を冠する顕彰制度を創設する事業をはじめ、物価高騰に対する事業者への消費喚起と生活支援を図るため、京丹後デジタルポイントシステムを活用し、全市民を対象に買物支援ポイントを発行する事業など、総額5億6295万円を増額する補正予算に対して、議会は500万円を減額する修正案を可決した。

S__6053916.jpg S__6053919.jpg

(仮)野村克也賞2023.07.05 本日6月定例会が終わった。

補正予算の審査は予想外の展開となった。
9日の予算委員会で審査を終える予定が、審査は終わらず、23日午後、28日午後の3日間にわたる異例の審査となった。
争点とったのは、地域消費喚起事業の内の消費喚起ポイント事業補助金と野村克也メモリアルプロジェクト推進事業の内の野村克也賞実行委員会(仮称)補助金500万円だ。
特に野村克也メモリアルプロジェクト委員会(以降、PT委員会)から提言があったとされる「野村克也賞」の創設に関して多くの疑義が出された。

予算決算常任委員会(以降、予算委員会)では、

  • なぜ、今年度中に創設しなければならないのか。
  • 賞の目的は何か。
  • プロ野球選手等著名人を対象とする意義は何か。
  • 市民福祉の向上にどうつながるのか。
  • 100万円の賞賜費の算定根拠は何か。
  • 450万円の費用を使ってどれだけの費用対効果があるのか。
  • 1年目と2年目で選考基準が違うのか
  • 恒久的な事業なのか。財源はどうするのか。

などの質疑に対して、十分な答弁が得られなかった。
PT委員会の議事録においては、事業について十分な検討がなされたとはいえず、「具体性が無い。議会で予算が通るとは思えない」「事務局に任せるという話にはならない」の意見もあった。今回、執行部の提案では、そうした意見が無視され「PT委員会では全会一致」かのような答弁がなされた。さらに「PT委員会で十分に検討され・・・」「PT委員会では、年内の受賞を・・・」「PT委員会は・・・」とことある毎に、PT委員会を盾にする答弁を繰り返したことは、甚だ遺憾でならない。
PT委員会は、どのよう提言を出そうとも、市長の諮問機関である。提言を受けた執行機関が、住民福祉に資する事業として精査し、市長の責任において提案されるべきものである。責任を市民に転嫁するようなことは、あってはならない。

議会は、執行機関の提案に対して、「住民福祉の向上に資するかどうか」「行政がすべき事業か」「費用対効果はどうか」など、多様な立場の議員が総合的に判断して、合議によって結論を出す場である。
今回の審査においては、

  • 名誉市民の名を冠するからこそ、その名にふさわしい賞かどうか。
  • 住民福祉の向上に資することのない事業は認めない。
  • 「否決されたら次は出さない」程度の政策なら認めない。
  • 議員個々の責任において、賛否を決める。
  • 説明責任を果たせない政策は賛成しかねる。

といった視座が働いたと感じる。

また、京丹後市議会は、より多様な意見を聞くため、こうした議論の過程を「市民に見える化」する等の議会改革に取り組んでいる。にも拘わらず、予算委員会の休会中に、執行機関により議員への個別相談が行われ、「名誉市民の賞をなぜ議会が反対するのか」「議会で否決されたら関係者から議員がどう思われるか」「否決されたら次は出さない」など、裏で賛成に誘導するような事実があったことは、残念で仕方がない。

今回改めて、議員各位並びに市長及び執行機関には、議会の独立性、透明性、公平性の観点から、議長として以下の見解を申し述べることになった。
その上で、予算委員会において、補正予算の修正に加え、委員会への意見を附すこととなり、結果として議会の権能を果たすことができたと思う。

 

審査中の議案に対する執行機関の関与について

審議中の案件について、本会議とは別に、執行部が議員に対して個別の説明や説得に回ることが、以前より見受けられます。
しかしながら、議会基本条例の第7条では「議会審議において、議員と市長等執行機関の長は、緊張感の保持に努めなければならない」と規定し、第8条2項において「立案及び執行における論点及び争点を明らかにし 、政策評価に資する審議に努める」と規定しています。また、第10条において、「議会と市長等執行機関が共に市民に対する責任を担いながら、計画的かつ市民の視点に立った透明性の高い市政の運営に資する」としています。
議会の独立性、透明性、公平性を守るためには、議会活動はすべて公開され、すべての議員が平等に議案の審議に参加できる環境を整えることが重要であり、その影響を以下に指摘します。

【議会の独立性】
議会は、行政から独立して、住民の代表として議論し、決定を下す機関です。従って、執行部からの独立を保つことが重要です。
しかし、執行部が個々の議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員が執行部の意向に影響を受ける可能性があります。これは、議会が執行部にコントロールされることにつながり、議会の独立性を損なうことになります。

【議会の透明性】
議会は、住民に対して開かれた議会である必要があります。従って、その活動を市民に公開し、透明性を確保することが重要です。
しかし、執行部が個々の議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員間の議論が市民に公開されず、透明性が低下する可能性があります。これは、議会の活動が透明性を欠くものとなり、市民の信頼を失うことになります。

【議会の公平性】
議会は、住民に対して公平な議会である必要があります。従って、公平に議事を行うことが重要です。
しかし、執行部が議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員が特定の利益団体の利益に偏った議論や執行部の意向に偏って議事を行う可能性が高まります。
また、特定の議員が他の議員よりも有利な立場になる可能性もあり、議案が不公平に審議されたりする可能性があります。

【結論】
以上のから、審議中の案件について、本会議等とは別に、執行部が議員に対して個別の説明や説得を行うことは、議会の独立性、透明性、公平性を損なう可能性があり、議会として認めるべきではないと考えます。

≫ 続きを読む

2023/07/05 審査の着眼点   谷津 伸幸
タグ:予算決算

令和4年度当初予算を修正、附帯決議は全会一致で可決!!

令和4年度当初予算を含む54議案の審査を終え、3月定例会が閉会した。katari.png
コロナ対策関連予算(令和3年度補正)を含む13ヵ月で編成された令和4年度当初予算の総額は357億9915万円となった。
しかし、当初予算については、十分な検討や内部調整がなされていない事業も多く、最終的に議会として5つの事業(計12,697千円)を予備費に充当する修正予算を提案し賛成多数で可決。2つの事業についての附帯決議を全会一致で可決する異例の幕引きとなった。
市の都市機能構想を今後50年以上に渡り固定する可能性を含む庁舎建設については、予め令和4年度当初予算から切り分け補正第一号とすることで4月に継続審査することとなった。
今回の予算においては、「SDGs」や「若者」といったキーワードが掲げられ免罪符のように感じた。市民の「あったら良い」という声を全て叶えることは、必ずしも適切とは言えない。全ての事業において「公共性は高いか」「公益性はあるか」「緊急性はどうか」「持続可能性はどうか」などの視点で検証し、他の政策と照らし合わせ、市長の責任において「最善の策」として議会へ提案しなければならない。当然、事業の目的・趣旨が明確で、費用対効果が考慮されなければ、議会として予算を認めることはできない。
流行りの言葉に踊らされることなく、持続可能な地域社会とするために、何が必要なのか。行政として何をしなければならないのか。議会としても、今一度、考えなければならない。

 

修正事業の概要と議会の意見

○副業型ふるさと創生職員採用 5,793千円

【事業概要】

U・Iターンの受け皿として創設したふるさと創生職員に、都市部の企業等に籍を置いたまま京丹後市の仕事を副業で行う「副業型」を新設するもの。

【議会の意見】

副業型は本市への移住が期待できない。そもそもの目的である定住ができないのであれば、採用の条件を満たさないにも拘らず、採用条件を緩和するというのは本末転倒である。また、具体的な業務の想定がなされていない。
リモートで、どれだけの効果がえられるのか費用対効果に疑問を感じる。職員採用委託料の200万円は高額すぎて理解できない。

 

○SDGsポイント発行経費 1,500千円

【事業概要】京丹後デジタルポイント導入事業.jpg

京丹後デジタルポイントの導入により、SDGs活動を行った市民等に対して登録店舗等での買い物に使用できる自治体ポイントを発行する。

【議会の意見】

SDGsには極めて多種多様な活動があり、ポイント評価するに足る客観的基準がない。かえってSDGs活動に対する市民の間での、不公平感を大きくする恐れが多分にある。
ボランティアやSDGsなどの自発的な行動に対して、ポイント付与することは、逆のインセンティブに働くのではないかと危惧をする。

 

○長寿食サミットフォーラム(仮称)準備経費 2,344千円

【事業概要】長寿食サミットフォーラム(仮称)開催準備事業.jpg

令和5年度に長寿食サミットフォーラム(仮称)を開催して、長寿食をアピールする。令和4年度は専門家の意見交換や先進イベントの視察などの準備経費。
サミットフォーラムを観光の出口として、令和5年度以降に商工観光部で進める。

【議会の意見】

令和4年度は、健康推進課で準備を進めるとしているが、開催の目的や具体的な内容、スケジュールも未定で、予算根拠として不透明な部分が多い。
更に、令和5年度のサミットフォーラム開催する商工観光部は、食やヘルスツーリズムの関係であるものの、長寿PRにはなるが観光の分野とは考えていない。
また、フォーラムに来丹される方の経済効果との見方であり、連携がとれているとは見えない。
この事業が、市民にとってのメリットを感じない。
議会として、こういった事業提案は決して認められない。

 

○京丹後産コシヒカリによるSDGs貢献事業 2,460千円

【事業概要】京丹後産コシヒカリによるSDGs貢献事業.jpg

SNSを活用した食料支援として、SDGs大賞をとったプラットフォーム「おにぎりアクション」を活用し、京丹後産コシヒカリをPRする。

【議会の意見】

「おにぎりアクション」は協賛企業が多く、自治体としても3番目。メディア露出によるPR効果も薄い。
「おにぎりアクション」への投稿で 100万円の PR効果があるとの説明についての根拠が乏しい。
また、公金出資によるPRが目的となっており、食料支援を行う「おにぎりアクション」の目的からして主客転倒している。

 

○水洗化推進支援事業補助金のリースバック活用分 600千円

【事業概要】

地域経済の活性化と既存住宅の水洗化を図ることを目的に、下水道等の供用開始から3年内に水洗化する費用の一部を補助するもの。
リースバック制度は、令和3年度に新設。

【議会の意見】

リースバック制度は、宅地価格が極端に低く不動産事業者も否定的であり相談もない。
予算執行の見込みがない予算を計上することは、地方財政法の観点からも適当でない。

 

 

修正事業の概要と議会の意見

京丹後デジタルポイント導入事業

【事業説明】京丹後デジタルポイント導入事業.jpg

スマホのアプリのみの対応で、必須の条件となる。
当面、自治体ポイントやSDGsポイントなどで、ポイント付与を進めていく。ポイント運営協議会の事務局は、商工会を中心に調整し、2人程度の人件費を見込んでいる。
導入に当たり各商店街と意見調整した。発行ポイントは事業者負担とし、会費はスタート時から徴収する。
登録店舗は、初年度は300店舗を目標としている。最終的に500店舗に増えると、月々2,000円の会費で、人件費も含めて運営でき、市の支援は必要なくなる。
将来的にデジタル地域通貨の導入の可能性について検討する。

【議会の意見】

消費喚起ポイントの発行については、スマホで電子決済する人に限られる。
市外の方にも最大2000ポイント(2万円の買い物で2000円)が付与される。
積算根拠を25,000世帯としているが、市民の電子決済の実態は分かっていない。
世代間で電子決済の普及状況の違いが予測され、制度的な問題がある。

 

丹後王国タワー等跡地整備事業

【事業説明】丹後王国タワー等跡地整備事業.jpg

オートキャンプ場をメインに検討していたが、オリンピックでスケートボードに注目が集まり、与謝野町の方を中心多くの署名を頂いた。
2月の連絡調整会議にスケートボートパークを提案したところ、RVパークやグランピングができたらありがたいという話があった。
府の担当課長に「スケートボードパークがしたい」と説明した。丹後王国ブルワリーには口頭で伝え、財団には連絡会議で伝えた。
異議があれば連絡がある。

【議会の意見】

平成27年のリニューアルでは、市長は積極的に取り組んでこなかったが、観光の中核施設として、どうあるべきか議論して頂きたい。
王国タワー撤去と跡地活用と合わせて、昆虫館やトイレの検討も不可欠だが全く協議・検討されていない。運営会社・管理会社との協議も十分とはいえない。改めてゼロベースで検討する必要性がある。
「修正すると、王国タワーの撤去や再活用を否決したこととなり、府の合併特例債の許可や協議が不調に終わる」との説明だが、それは議会としても望む結果ではない。有利な財源を活用するため附帯決議とすべき。

≫ 続きを読む

2022/03/30 審査の着眼点   谷津 伸幸
お気軽にお問い合わせ下さい

TEL 090-8200-4434

受付時間:平日
8:30〜20:30

FAX 0772-72-5243

受付時間
24時間受付