6月補正予算を修正可決。議会の権能を発揮! 附帯意見も
6月定例会では、本市の名誉市民である故野村克也氏の功績や考え・言葉(こころ)を後世に引き継いでいくため 、官民で組織する実行委員会を設立し、同氏の名を冠する顕彰制度を創設する事業をはじめ、物価高騰に対する事業者への消費喚起と生活支援を図るため、京丹後デジタルポイントシステムを活用し、全市民を対象に買物支援ポイントを発行する事業など、総額5億6295万円を増額する補正予算に対して、議会は500万円を減額する修正案を可決した。
補正予算の審査は予想外の展開となった。
9日の予算委員会で審査を終える予定が、審査は終わらず、23日午後、28日午後の3日間にわたる異例の審査となった。
争点とったのは、地域消費喚起事業の内の消費喚起ポイント事業補助金と野村克也メモリアルプロジェクト推進事業の内の野村克也賞実行委員会(仮称)補助金500万円だ。
特に野村克也メモリアルプロジェクト委員会(以降、PT委員会)から提言があったとされる「野村克也賞」の創設に関して多くの疑義が出された。
予算決算常任委員会(以降、予算委員会)では、
- なぜ、今年度中に創設しなければならないのか。
- 賞の目的は何か。
- プロ野球選手等著名人を対象とする意義は何か。
- 市民福祉の向上にどうつながるのか。
- 100万円の賞賜費の算定根拠は何か。
- 450万円の費用を使ってどれだけの費用対効果があるのか。
- 1年目と2年目で選考基準が違うのか
- 恒久的な事業なのか。財源はどうするのか。
などの質疑に対して、十分な答弁が得られなかった。
PT委員会の議事録においては、事業について十分な検討がなされたとはいえず、「具体性が無い。議会で予算が通るとは思えない」「事務局に任せるという話にはならない」の意見もあった。今回、執行部の提案では、そうした意見が無視され「PT委員会では全会一致」かのような答弁がなされた。さらに「PT委員会で十分に検討され・・・」「PT委員会では、年内の受賞を・・・」「PT委員会は・・・」とことある毎に、PT委員会を盾にする答弁を繰り返したことは、甚だ遺憾でならない。
PT委員会は、どのよう提言を出そうとも、市長の諮問機関である。提言を受けた執行機関が、住民福祉に資する事業として精査し、市長の責任において提案されるべきものである。責任を市民に転嫁するようなことは、あってはならない。
議会は、執行機関の提案に対して、「住民福祉の向上に資するかどうか」「行政がすべき事業か」「費用対効果はどうか」など、多様な立場の議員が総合的に判断して、合議によって結論を出す場である。
今回の審査においては、
- 名誉市民の名を冠するからこそ、その名にふさわしい賞かどうか。
- 住民福祉の向上に資することのない事業は認めない。
- 「否決されたら次は出さない」程度の政策なら認めない。
- 議員個々の責任において、賛否を決める。
- 説明責任を果たせない政策は賛成しかねる。
といった視座が働いたと感じる。
また、京丹後市議会は、より多様な意見を聞くため、こうした議論の過程を「市民に見える化」する等の議会改革に取り組んでいる。にも拘わらず、予算委員会の休会中に、執行機関により議員への個別相談が行われ、「名誉市民の賞をなぜ議会が反対するのか」「議会で否決されたら関係者から議員がどう思われるか」「否決されたら次は出さない」など、裏で賛成に誘導するような事実があったことは、残念で仕方がない。
今回改めて、議員各位並びに市長及び執行機関には、議会の独立性、透明性、公平性の観点から、議長として以下の見解を申し述べることになった。
その上で、予算委員会において、補正予算の修正に加え、委員会への意見を附すこととなり、結果として議会の権能を果たすことができたと思う。
審査中の議案に対する執行機関の関与について
審議中の案件について、本会議とは別に、執行部が議員に対して個別の説明や説得に回ることが、以前より見受けられます。
しかしながら、議会基本条例の第7条では「議会審議において、議員と市長等執行機関の長は、緊張感の保持に努めなければならない」と規定し、第8条2項において「立案及び執行における論点及び争点を明らかにし 、政策評価に資する審議に努める」と規定しています。また、第10条において、「議会と市長等執行機関が共に市民に対する責任を担いながら、計画的かつ市民の視点に立った透明性の高い市政の運営に資する」としています。
議会の独立性、透明性、公平性を守るためには、議会活動はすべて公開され、すべての議員が平等に議案の審議に参加できる環境を整えることが重要であり、その影響を以下に指摘します。
【議会の独立性】
議会は、行政から独立して、住民の代表として議論し、決定を下す機関です。従って、執行部からの独立を保つことが重要です。
しかし、執行部が個々の議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員が執行部の意向に影響を受ける可能性があります。これは、議会が執行部にコントロールされることにつながり、議会の独立性を損なうことになります。
【議会の透明性】
議会は、住民に対して開かれた議会である必要があります。従って、その活動を市民に公開し、透明性を確保することが重要です。
しかし、執行部が個々の議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員間の議論が市民に公開されず、透明性が低下する可能性があります。これは、議会の活動が透明性を欠くものとなり、市民の信頼を失うことになります。
【議会の公平性】
議会は、住民に対して公平な議会である必要があります。従って、公平に議事を行うことが重要です。
しかし、執行部が議員に対して個別の説明や説得を行うことで、議員が特定の利益団体の利益に偏った議論や執行部の意向に偏って議事を行う可能性が高まります。
また、特定の議員が他の議員よりも有利な立場になる可能性もあり、議案が不公平に審議されたりする可能性があります。
【結論】
以上のから、審議中の案件について、本会議等とは別に、執行部が議員に対して個別の説明や説得を行うことは、議会の独立性、透明性、公平性を損なう可能性があり、議会として認めるべきではないと考えます。