議案審査等

民・官協働による地域マネジメントと観光推進体制(由布市)

由布市の概要

由布市は、大分県のほぼ中央に位置し、平成17年10月1日に、挾間町・庄内町・湯布院町の3町が合併して誕生した。

(面積319.32k㎡、人口約36,000人、世帯数15,000戸)

北部から南西部にかけては、由布岳や黒岳など1,000m級の山々が連なり、由布岳の麓には標高450mの由布院盆地が広がっている。由布岳、金鱗湖と由布院温泉、湯平温泉、塚原温泉の3つの温泉地が主な観光資源である。

 

視察概要

〔観光の現状〕

○ 年間約400万人の観光客が来訪

○ 観光消費額は年間約140億円

〔由布市観光の考え方、方向性〕

人と暮らしが織りなす“懐かしき未来”の創造

〜住んでよし、訪れてよし、原点回帰のまちづくり〜

○ 観光振興は、地域内外の交流や連携によるまちづくりを基本とし、大きく新しい価値を生み出す「総合産業」として期待

○ 観光基本計画は、各地域の持ち味を活かした魅力的な観光形成とともに、地場産業の連携による地域活性化のための共通指針として策定

〔由布市の観光推進体制の概要〕

5つの観点

1.官民の役割分担の明確化

2.広域の観光推進組織と各地域の観光推進組織の役割分担の明確化

3.各地域における観光協会と旅館組合の役割分担の明確化

4.地域として求められる観光機能の充実

5.観光部門を越えた総合性、観光総合産業の視点強化

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〔由布市まちづくり観光局について〕

(目的)

住んでよし、訪れてよしの「滞在型・循環型保養温泉地」を目指すとともに持続可能な観光まちづくりに貢献することを目的とする。

(組織体制)

組織運営

代表理事:行政代表として副市長、

民間代表として由布市観光協会(7団体連絡会)長

専務理事兼事務局長:法人職員1名

事業運営(15名)

専務理事兼事務局長:法人職員1名(再掲)

観光戦略部門:マーケティング・プロモーション・マネジメント等

(法人職員2名、行政派遣2名、民間派遣1名)

観光案内部門:観光情報の提供・旅行商品代理販売・宿泊斡旋

レンタルサイクル・手荷物預かり・手荷物集配送 等

(法人職員9名)

その他

顧問:由布市長、社員:代表理事2名(再掲)・監事1名、

賛助会員:観光協会5団体、旅館組合2団体

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〔由布市まちづくり観光局の経営理念・ビジョン〕

(経営理念)

私たち由布市まちづくり観光局は、世界に一つしかない由布の“未来”と由布で暮らす人、訪れる人、働く人の心豊かな“暮らし”“出会い”“夢”の実現に貢献します。

(行動指針)

人間中心、⒉企画創造、⒊魅力表現

(ビジョン)

効果的なマーケティングとプロモーションを通じて、地域の世界観を表現し、“由布の市場価値”を高める組織となることを目指します。

 

所 見

由布院のまちづくりの基本は、西ドイツのクアオルト構想にある。「最も住みよい“まち”こそ、優れた観光地である」との考えから、旅館の若手経営者3名が50日間ヨーロッパを視察し、民間主導で実践されてきた。こうして流れを汲む5つの観光協会、2つの旅館組合と市が、事務調整会議など、段階的な体制整備を経て、新たな官民組織として、(一社)由布市まちづくり観光局が平成28年に設立された。

由布市の観光推進は、5つの観点から整備しており、官と民との役割を明確化したうえで、これまでの地域毎に行っていたまちづくりや魅力づくりに加え、広域で行なった方が有意な事業を由布市まちづくり観光局の役割として明確化している。由布市観光協会もあるが、行政政策のご意見番として存在するのみで、各観光協会が、地域の観光まちづくりの推進を、旅館組合は、業界団体として地位向上・発展に向けた取組の推進を役割として明確化している。

行政は、「住んでよし」の視点から施策の企画・立案と評価・見直し並びに民間ではできない観光施設をはじめとするインフラ整備・管理を行ない、それ以外の施策の実施は、まちづくり観光局、各観光協会及び旅館組合等が担っている。今回、視察を行った由布市まちづくり観光局は、「訪れてよし」の視点からマーケティング・プロモーションといった観光戦略部門、観光情報の提供など観光案内部門を担っている。由布市まちづくり観光局の運営は、観光案内所としての機能を持つツーリストインフォメーションセンターの指定管理事業に加え、旅行商品の販売や宿泊斡旋、レンタサイクルなどの収益事業で運営されている。各観光協会は、地域の観光まちづくりの推進のための人件費(1名分)以外の補助を受けていない。

本市においては、合併以前は観光に関心のない地域にも同様に観光協会を設置し、市全域を統括する京丹後市観光協会としたことが、今日の混乱を招いている。由布市の観光は、それぞれの地域の特徴を活かし、それぞれの役割を明確にすることで、自立した事業を促している。広域的に行う事業を観光局が担っているが、指定管理や委託事業だけに頼ることなく、独自の収益事業があることが成功の要因のようだ。

2019/03/20 視察調査   谷津 伸幸
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